画面サイズと文章

 仕事先のパソコンが先日新しくなって、なかなか苦戦している。OSが替わったりOfficeのバージョンが新しくなったりしたのも影響しているが、ディスプレイのサイズがぐんと小さくなったことも大きい。

 15年ほど前、ブログサービスの隆盛期、利用していたライブドアブログは携帯電話から指定のアドレスへメールを送ることで記事の更新ができた。もちろんガラケーの時代だ。
 その頃の僕はかなりの頻度でブログを更新していたけれど(何しろ時間だけはたくさんあった)、携帯電話から更新した記事は少ない。当時の僕のまわりにはブログをやっている友人がとても多くて、その友人の一人からその理由を問われたとき、パソコンと携帯では文章が変わるから、と答えたことがあった。思考が変わる、と答えたかもしれない。
 それからだいぶ時間が経過したが、その感覚はいまも変わらない。ガラケーからスマートフォンになっても、ある程度まとまった文章はパソコンでしか書かない。

 理由をとしては、把握できる空間の広さが関係しているのではないか、という考えにたどり着いた。パソコンの画面の広さと、携帯電話(スマートフォン)の画面の広さでは、一度に見ることができる範囲が変わる。
 一度に視界に入る情報の量というのは重要で、これまで自分が何をどれだけ書いたのかということが見えないと、これから何をどれだけ書けばいいのか、暗闇の中にいるような気持ちになって、進むのが難しい。自分がいま全体のどこにいるのかがつかめない、というか。
 ちなみに、これを書きながら、僕はドラクエ3のカンダタ(2回目)がいる洞窟を思い浮かべている。あの洞窟も攻略本があれば安心して先に進むことができるけれど、何も把握できていない状態では、どちらにどれだけ進めばいいのか、そして自分がいまどこにいるのか、わからずに、恐怖さえ覚える(知らない人はすみません)。
 仕事先の新しいパソコンが使いにくいのも、以前までは一度に見えていた範囲が、見えなくなっているからだろうと思う。

 身近に大学生がいないので直接確認はできていないのだが、最近はスマートフォンでレポートを書く学生もいる、と大学の教員が書いているのを読んだことがあるが、僕にとってそれは曲芸のようなものにさえ感じる。すごいなとも思うし、本当に書けるのだろうかとも思うけれど、足元しか見えない暗闇の中を進んで書き切られた文章は、かなり刺激的なものになるのではないかという、興味も持っている。洞窟を出てみたら、思っていたところと全然違うところにいた、みたいな。それはそれで、大きな発見があるはずだという予感が、僕にはある。