いま、読みたい本は

 いつも同時並行で何冊かの本を読んでいる。
 それぞれの本にはそれぞれの読むタイミングがあって、たとえば夜寝る前に布団の中で読む本。たとえば休日の昼間に読む本。たとえばあの店で読む本。たとえば電車の中で読む本(最近減ったけれど)。

 家から持ち出して読む本は、小さい方がいい。といって、小さいけれど繊細なつくりの本は、持ち歩くのが不安だ。
 まあ、たいていは、大手出版社から出ている文庫本に落ち着く……となれば、話は早いのだが、読書はそういつも合理的な選択をしてはくれない。
 ハードカバーと文庫本、明日あの店で読みたいのはハードカバー、今日寝る前に読みたいのは文庫本、そんなことはざらにある。僕は文庫本を手に、布団へ入る。

 喫茶が併設されている本屋さん。今日は、喫茶で本を読もうと思っている。
 注文していた何冊かの本が、届いたらしい。
 じゃあ、その届いた本を喫茶で読むかというと、そうとは限らない。
 今日、あの喫茶で読みたいのは、この分厚い小説。そんなとき、僕は迷わず分厚い本をバッグに入れる。そのバッグに、帰りには何冊もの本が追加されることを知りながら。