1月11日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.007

 ラグビーの大学選手権を見る。

 見るといっても、不覚にも今日が決勝だということを忘れていて、テレビをつけたら前半の30分を過ぎていた。天理22対早稲田7で、前半終了間際にさらに1トライ1ゴールを決めて29対7。

 新年2日の準々決勝を見る限り、いい試合になるのではないか、明治を圧倒した天理が悲願の優勝を果たすかもしれない、と思っていたけれど、後半も天理のラグビーは盤石で、とにかく強かった。印象的な松岡キャプテンを中心に、13番フィフィタはやはり圧巻で、12番市川とのコンビネーションは素晴らしかった。早稲田も善戦はしたが、早稲田をもってしても「善戦」が精一杯だったような、天理の運動量と組織力と個の強さばかりが目立つ試合だった。

 でも僕が見た中で一番印象に残ったトライは、早稲田の3番(つまり大柄な)小林が走ってパスをフェイントしてまた走ってパスを出してなおかつタックルに行く選手をブロックして奪い取った21番河村(スクラムハーフ)のトライだった。僕の中でラグビーは中継を見ていて最も声が出るスポーツだけれど、このシーンは興奮して声がいっそう大きくなった。



 水木しげるの最初の漫画は『ロケットマン』という作品で、兎月書房から1958年に出た。記念すべきデビュー作だ。

 しかし実はそれよりも前に、水木しげるが描いて出版された漫画が存在している。『赤電話』という作品で、1957年に同じく兎月書房から出た。作者名は「宮健児」で、水木しげるとは別人なのだが、96ページの作品のうち「少なくとも後半のおよそ四十ページは間違いなく水木しげるの作画であり、前半にも手を入れている可能性がある」といい、「兎月書房の依頼を受け、何らかの事情で途絶していた未完原稿をデビュー前の水木が書き継いだというのが真相のようである」そうである(*1)

 僕の感覚としては「んなムチャな」という感じなのだけれど、先日偶然手に取った藤子不二雄Ⓐ『愛…しりそめし頃に…』(いわゆる『まんが道』の最終章)に、「怪我をしたちばてつやの代わりにトキワ荘のメンバーが原稿を完成させる」という話があって、そういうこともあったのかもしれない。


 さて、その60余年前の漫画『ロケットマン』……なかなかどうしておもしろい。現在の漫画に比べるとコマ割りが単調ではあるけれど(当時の貸本マンガは1ページ同サイズの6コマor8コマが基本だったらしい)、あまり大した問題ではない。

 「貸本漫画はムチャクチャな世界」という頭がどうしてもあるのだが、自分がちゃんと読んだわけではないので、どうムチャクチャなのか、どのくらいムチャクチャなのか、実物を知らずに知識だけが先走ってしまう。これは──いうまでもなく──よくない。こういう偏見は、「周辺から読んでいく」ことの弊害になりうる部分だと思う。

 偏見や先入観をどうコントロールするか、持つ必要のないそれらを持ってしまったときにいかに対処するか、これは僕にとっての大きな課題であり、あり続けるだろう。読書とて例外ではない。偏見のある読書は、おもしろみにも欠けてしまう。

 これはくれぐれも気をつけないといけないと反省したのだけれど、どうも誕生日を過ぎてから反省ばかりしている気がする。



*1:『水木しげる漫画大全集 001 貸本漫画集1 ロケットマン他』p.368



【通巻001 貸本漫画集1 ロケットマン他】

・『ロケットマン』兎月書房1958

・『プラスチックマン』綱島出版1958

・『宇宙少年』所収作品 兎月書房1960

 ・「ベビーZシリーズ 第一話 水人間現れる!」前編・中編

 ・「火星人がやってきた」※関谷すすむ名義

 ・「アマゾンの奇妙なもの」※武良茂名義

 ・「宇宙船の話」※なんでも屋・三平名義

 ・「原始世界の竜たち」※なんでも屋・三平名義

・『赤電話』兎月書房1957(宮健児・著)