1月12日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.008

 狭いワンルームでの在宅勤務は精神的にかなりきつい、というネットの記事を読んだ。

 他人事ではなくて、僕も昨年の夏頃に体調に異変を感じ、近所の祖母の家に「通勤」して勤め仕事を行うようにした。自律神経に不具合をきたしていたのかもしれない。「通勤」するようになって、体調は安定した。

 在宅勤務を僕は歓迎している方だ。通勤がなくなって機会を失ったこともいくつかはある。けれども、朝が苦手な僕としては、起床時間を遅くできるというだけでも、断然ありがたい。家にいれば、家の中のこともできる。

 でも、家の中のことができるということは、家の中のことが目についてしまうということでもあって、仕事と生活が空間的に同一だということは、かなり気をつけないとストレスが溜まることでもある。少なくとも僕にとってはあった。昼食をとっているときにパソコンの姿が視界にはいるのは、やはりよくない。

 作業それぞれの、空間を分けたい。ほかのことがまったく目に入らない、別空間がほしい。

 となると、僕は本当は「通勤」をしたいのかもしれない。歩いて5分ぐらいのところに、専用の仕事場がほしいのかもしれない。いや、なんなら、アパートの隣の部屋でもいい。

 感覚では、忙しいときほど、自宅でない方がストレスが溜まらない。今日は自宅にいたが、やはり切り替えが少々難しかった。まあ、「通勤先」はネットが引かれておらず、速度の出ないモバイルWi-Fiでの作業となるので、その不便さはあるのだけれど。でも贅沢は言えないですよね。


 昨日に続いて『水木しげる漫画大全集 001 貸本漫画集1 ロケットマン他』。

 貸本漫画らしいといっていいのかはわからないが、この中の作品にはけっこう唐突なシーンや展開がある。

 まずはデビュー作『ロケットマン』。「ロケットマン」というタイトルなのに、ロケットマンは最終盤まで出てこない。しかも何の前触れもなく出てくる。物語は「グラヤ」という怪物を中心に進むのだけれど、グラヤにしても説明もなくいきなり「グラヤ」として登場し、認知されている(ちなみに昨日の日記の画像の赤い一つ目の怪物がグラヤ)。

 『プラスチックマン』は、一件落着の後、「きみの話をきいてテレビ会社からきてるよ」「どうですテレビでスーパーマンと一戰まじえる気はありませんか」「今日はつかれていますからこれで終りにして下さい」というセリフで終わる。事件自体は解決しているのだけれど、「つかれていますから」という終わらせ方がすごい。ちなみにプラスチックマンはアメコミのキャラクターで、ロケットマンもスーパーマンそのもの。

 『宇宙少年』シリーズは不人気だったのか二巻で終わったため、続き物だった「ベビーZシリーズ 水人間現れる!」は未完。水神が襲ってきて、「俺たちはどうなるのだ」「大丈夫 僕に自信があります」という大ゴマで終わっている。めちゃくちゃ続きが気になる。

 そして『赤電話』。なんとこれ、話の中に「赤電話」は一切出てこない。電話を連想するストーリーでもなく、何を意味するタイトルなのか謎。


 しかしこういう唐突さのいいところは、あまりに自然な唐突さゆえ、自分が何か見落としていたのだろうかと読み返してしまうことだと思う。結果、何も書かれていないのだけれど、伏線がまったく張られていないことがかえって伏線が張られているのと同じ楽しみ方を誘うのは、筋道が立ち過ぎた世界では決して味わえないものだろう。ムチャクチャといえばムチャクチャなんだけど、いまこれと同じことをやろうとすると、たいへんな勇気が必要になると思う。正直なところ、けっこうクセになります。