1月15日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.011

 小林信彦著『定本 日本の喜劇人』が届いたという連絡が入り、本屋イトマイへ走った。実際は年末には入荷していたので、もう半月もほったらかしにしていた格好になり、申し訳ない気持ちでまずは喫茶に入り、スパイスカレーと伊良コーラをいただく。

 会計でようやく『定本』とご対面。思わず「でかい!」と笑ってしまった。ドカベンかと思った。しかもたまに見かける「輸送用の保護箱(外箱)」に入っている。保護箱はダンボールに直接印刷がしてあって、出版物とは思えぬ無骨さ。バーコードもスリップを入れる袋も保護箱に貼られている。出版物と梱包用品のミックスといった趣だし、実際の機能もそうなのだろう。それにしても、「印刷適性のない紙に印刷がしてある」のは、どうしてこんなにそそられるのか。

 ちなみに昨日の日記で「親よりも歳上の小説家」という文言を書いたけれど、小林氏にいたっては「親よりも歳上」どころか祖母と同じ年の生まれだ。


 イトマイの喫茶では、持っていった水木しげるの自伝エッセイ『ねぼけ人生』を読む。後半は先に読んでいたので、前半の幼少期から復員後までの部分。もちろん戦争の部分は悲惨であるし、想像すら及ばない過酷な記録なのだが、その壮絶な日々さえ水木節で苦痛なく読んだ。子供時代の話などは思わず笑い声を出してしまいそうだった。

 水木しげるの「文章」を本格的に読むのはほとんどはじめてだった。すでに自伝漫画で見たことのあるエピソードが多く吸収しやすいということもあっただろうが、それ以上にその筆致にぐいぐいと惹きつけられた。水木しげるは、来年生誕100周年を迎える。


 ところで『定本 日本の喜劇人』を見てドカベンみたいだと思ったと書いたが、漫画『ドカベン』の水島新司のデビュー作は(水木しげると同じく)貸本漫画だった。気にしていろいろ読んでいると、わりに意外な(歴史を知らないのでなんでも「意外」に感じてしまう)共通点が見つかる。

 共通点といえば、水木しげるも水島新司も故郷に自身の漫画のキャラクターのブロンズ像があります。時々盗られたり折られたりするのも、同じですね。いや、困ったことなんだけど。