1月3日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.003

 箱根駅伝を見る。といってもすでに7区の終盤で、変わらず創価大学がトップを走っている。意外に粘っているというのは失礼で、大健闘といっていい。その後、8区も粘り、9区で区間賞の快走、初優勝を掴んだと思ったが、最終10区のラスト2キロで駒澤大学による世紀の大逆転劇となった。まさか1区間で3分以上の差を覆すとはと思ったが、これはまさにツール・ド・フランス2020のタイムトライアルの再来で、盤石だったトップをワンチャンスの一撃で差し切るというのは、劇的ではあるが、残酷なものでもある。
 それにしても、創価大で思わぬ好走を見せた5区と9区の選手は、10000メートルの持ちタイムこそ同区間を走る選手の中では下位だったが、やはりトラックの10キロと、ロードの20キロ超は全然違うのだと再認識した(山上りの5区は特殊な区間ではあるけれども)。あるいはマイヨ・ジョーヌ・マジック(ツール・ド・フランスで総合首位の選手が思わぬ力を発揮すること)と同じく、箱根先頭マジックがあるのかもしれない。箱根が終わるといよいよ年始も終わりという感じがする。


 今年は箱根駅伝も開催が不透明だったというが、戦中戦後にも空白の年がある。1941年(昭和16年)と1942年、それから1944年~1946年だ。最初の二年は軍需物資の運搬のために国道1号線の使用許可が下りなかったためで、あとの三年は学徒動員と終戦後の混乱のためだった。なお41年には1月と11月に、東京青梅間で代替大会が開かれている(どちらも日大が優勝)。

 その間、1943年(昭和18年)に靖国神社から箱根神社にかけての往復の駅伝が開催された。青梅駅伝を二回挟んだ後に復活した箱根駅伝(第22回大会)で、この大会では今年と同じく最終10区での逆転劇で日大が優勝している。

 その模様を、私は『昭和十八年の冬 最後の箱根駅伝』(早坂隆/中央公論新社/2016)で読んだ。いささかアクのある文章ではあるけれど、当時のランナーたちへの取材も含めた力作で、三年前の正月に購入した。ということは2018年に箱根駅伝を見て何か感じたことがあったのだと思うけれど、よく覚えていない。

 スポーツのノンフィクションを読むようになった頃だと思う。その嚆矢は『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』(長谷川晶一/白夜書房/2011)で、最初に読んだのがこの本でなければ、スポーツノンフィクションを手に取るのはもっと遅れただろう。プロ野球の草創期に小林商店(現ライオン)がスポンサーとなった「ライオン軍」を描いた『広告を着た野球選手』(山際康之/河出書房新社/2015)もよかった。「優れたノンフィクションは、だんだん優れた小説のようになる」と感じさせてくれた二冊だった。


 昨年購入した本の数に比べて、読んだ本の数はぐっと少なく、その中には再読が一定の割合で含まれている。つまり買ったけれども読まれていない本が多いわけで、しかしながらおもしろい本は何度も読みたいもので、はたして今年はどうなるのだろうかと、今日も早速過去に読んだ本のページを開いている。