2月10日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.024

 「ウォーターベッドで何も考えない」を実践するため、連日の整形外科通い。

 何も考えないでいようと、目を閉じる。あたりにはリラックスを促す音楽が流れている。

 以前、僕には〈集中の仕方〉があった。目を閉じ、意識を内へ内へと落としていく。落ちきった頃には、雑念が消えている。本腰を入れて書く作業に取り組みたいときには、一度その〈集中の仕方〉というステップを設けていた。もともとは集中力に欠けるがゆえに編み出した手法だったが、なかなか効果的だったように思う。

 ところがここ3、4年で、僕はすっかり〈集中の仕方〉を忘れてしまったらしい。意識は全然内側に落ちていかない。なので、最近はイヤホンをして、音楽をかけている。杖をつくと歩行が楽だし安定するというが、自力で集中できないのであれば、外部の何かに頼るしかない。

 音楽といっても歌詞があるのはダメで、日本語だと歌詞を言葉として読んでしまうし、意味のとれない言語でもメロディーに乗って歌ってしまうから「書く」のには向かない。最近はnensow『music for fuzkue』とTHA BLUE HERB『THA BLUE HERB』の3枚目と4枚目(インストゥルメンタル)をかけてばかりいる。前は無音じゃないとダメだったのが、自前で集中力を掘り起こせなくなってから音楽が(オフボーカルであれば)大丈夫になったので、意識の保ち方そのものが少し変化しているのかもしれない。

 ということを、ウォーターベッドの上で考えた。脳は常に考え通しだ。

 一方で気がついたのだが、首の牽引を行なっているときは、何も考えていない。どうやら何かを考えたくても、牽引のために頭が上下に動かされる際に思考が中断されてしまうらしい。牽引のときは何も考えられないというのが脳にインプットされているのか、首の牽引を受けている間は、自然と「なーんにも考えない」の状態になっているようだ。

 逆にいうと、ウォーターベッドはかなり「何かを考えやすい」環境のようで、粘着テープでカーペットをコロコロするように、漠然と考えていることをとにかく表に出すのに適しているのかもしれない。

 とはいえ、やり方はどうであれ、自前で集中力を掘り起こすやり方も会得したい。これこそまさに訓練が必要だろう。訓練……忙しくなりそうだ。