2月20日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.028

 全集を読もうとする人の何割かが、おそらく「どの巻から読むか」で悩むのではないかと思う。僕は悩んだ。一般的に考えれば、巻の順番に読むというのがオーソドックスな読み方だろう。実際、というか、結局のところ、というか、僕もこの全集読破日記では1巻から順に読んでいる。

 全集の巻の並び順・分類にはいくつかあるはずで、僕が知っている限りだと「(概ね)時代順」と「(だいたい)ジャンル別」とがある。時代順は古い順に並べて、ジャンル別はジャンルごとで巻を分けるやり方。たとえば河出書房新社の『ピーナッツ全集』は時代順、角川書店の『宮脇俊三鉄道紀行全集』はジャンル別(国内紀行、海外紀行、雑纂に分かれている)。

 『水木しげる漫画大全集』は時代順とジャンル(種類)別の折衷といった感じで、概ね巻数の若い方が年代が古いが、一部で入れ替えが発生している。例えば貸本時代の漫画では、戦記物は戦記物で巻がまとまっているし、「鬼太郎」も鬼太郎だけで巻がまとめられている。

 小説の全集で長編と短編がある場合は、短編は短編だけでまとめられることもあり、この場合も年代に若干の前後が発生する。厳密な時代順というのは、どの全集であれ難しいだろうと思う。

 僕は最初、『水木しげる漫画大全集』を、時代順(作品の発表順)に読めないかと思った。それは全巻が手元に揃っていなかったので早々に諦めたが、いずれはそういう読み方もしてみたい。もっとも、発行年はわかっても発行月日までわからない作品もあるのだが。全集を時代順で読む楽しみ方は、ミュージシャンのCDアルバムを発表順に聴いていく楽しみに近いと思う。


 同じ本を期間を空けて二度、三度と読むことがある。それは、読むタイミングによって自分の感じ方が変わるということもあるし、その本が他の作品・人物・事象とどういう関係性にあるか、どういう影響を受け合ってきたか、ということに新たに気がつく(ことがある)からでもある。

 同じ作者の作品を追っていくと、その作者の進化や、あるいは深化、あるいは変化といったものが読み取れる(ことがある)。進化にしても退化にしても滞留にしても、それが一番読みやすい形で示されているのが〈全集〉だと思う。まことに、便利といえば便利なものだ。


 もともと『水木しげる漫画大全集』は、かなりデタラメな順番で購入していた。先に読みたいもの、あるいは刊行年が古いもの(この全集は巻数の順番に出たわけではなかった。例えば最初に出たのは21巻と29巻と81巻だった)を優先して買っていた。

 その理由から、持っている巻がだいぶ飛び飛びになっていたのだけれど、今回ようやく1巻から連続して22巻までが繋がった。自分で作った全集のリストに、だんだん「購入済」の文字が増えていくのはやはりいいもので、そこに隙間が少なくなっていくのもまた別の美しさがある。

 巻をバラバラに買うことの不都合は、買うたびに本棚での並び順が変わることで、特に今回は全体の巻数が多いものだから、間に挿し込むのにも苦労する。それを考えると素直に順番に買っておけば楽だったけれど、まあ、そうはいっても、というところでもある。