3月15日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.039

 僕はよく家で『笑っていいとも!』のオープニングの歌を口ずさむのだけれど、先ほど口ずさみながら、ふと、今の子供たちは笑っていいともそのものを見た経験がないという(当たり前の)ことに気づき、ガクゼンとした。「明日来てくれるかな?」と振られても、「いいとも!」と答えることを知らないし、いつお友達紹介の電話が来てもいいようにシミュレーションをしておく経験もないだろう。時代というのは移り変わるものだ。

 出演のメインが音楽番組と深夜番組と地質の番組になって、場合によってはタモリのことを知らない人も数を増しているのかもしれない。まあその点は、僕も例えば大橋巨泉のことをよく知っているわけではないし、欽ちゃんは仮装大賞の人というイメージだし、いかりや長介は完全に俳優だから、理解できることではあるけれど。

 そう考えると、アンパンマンやドラえもんの認知度は驚愕すべきもので、一生アンパンマンを知らないで過ごす人を想像するのは、一生タモリを知らないで過ごす人を想像することよりも難しい。作品と人物なので、比較に無理があるというのは置いておくとして。

 先日、『悪魔くん』が30年ぶりにアニメ化されるというニュースがあった。水木しげる作品でいうなら、『ゲゲゲの鬼太郎』は60年代を皮切りに、以降各年代でアニメ化されていて、かなり広い範囲で知られているはずだ。

 朝ドラ『ゲゲゲの女房』を見ていたとき、「ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲー」という歌詞を出演陣が平板なイントネーションで読み上げていたが(ドラマのその時点ではまだ曲が付いていなかったので)、このフレーズを、〈あの節〉をつけないで自然に読み上げるというのは、実際にやってみると思った以上に難しいことだと感じた。

 『ゲゲゲの鬼太郎』の歌は口ずさむときもどこか夜の墓場ふうに歌ってしまうし、「明日来てくれるかな?」と振られると「いいとも!」と反射的に答えてしまう。いいともはお昼のテレビとしてお茶の間の顔であり続けたし、アンパンマンは子供向けアニメの雄として君臨し続けているけれど、こういう圧倒的な存在がもし今後も出てくるのなら、次はどういう番組になるのだろう。