3月6日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.036

 サイクルロードレース、「ストラーデ・ビアンケ」を見る。今年はイタリア系のレースの放映権をJ SPORTSが獲得したので、見られるレースがぐっと増えた。ヨーロッパが舞台なので日本と時差があり、文字通り眠れない日が多くなりそうだ。自転車はまだ現地の明るいうちにやるからいいけれど(開催地にもよるが、日本時間だと深夜1時前後に終わるレースが多い)、サッカーなど夜にやるスポーツのファンはもっと大変なのだろうと想像する。まあ、うれしい悩みだ。

 サイクルロードレース中継を見ていると、つい声が出てしまうときがある。選手がアタックを決めたとき、あるいは逆に有力選手が遅れたとき、落車などトラブルがあったとき、スプリントでのゴールシーンなど。サイクルロードレースの場合、レースの全貌を常にチェックできるわけではないので、カメラが切り替わったことで〈事件〉を知るケースも多く、そこが球技とは違うところだろう。

 年間で最も中継を見るスポーツはプロ野球で、その機会は他のスポーツと比べて圧倒的に多い。しかし、意外にプロ野球では見ていて声を出すシーンは少ない。誰かと見ているときは、情報を出し合ったり、解説めいたことをしたり、何かと話しながら画面を見るが、それはどのスポーツでも同じことであって、一人で見ているときはほとんど黙って見ている。なんとなくプロ野球はテレビに向かってブーブーと文句を垂れたり、応援しているチームが負けると不機嫌になったりするイメージがあるが、僕の場合はまったくそんなことがない。とても穏やかな観戦者だと思う。

 見ているときに最も声が出るのはラグビーだと思う。これは一人で中継を見ていてもしょっちゅう声が出る。特に応援しているチームはないのだけれど、トライのシーンでは、いった、とか、やった、とか言ってしまうし、パスが見事に通ったときなども声が出る。おそらく観戦中に最も興奮しているのはラグビーだ。

 ラグビーと野球を比べたとき、肉体の接触があり、パワーとスピード、またスタミナなど、フィジカルなタフさが魅力なラグビーには、有無を言わさず声を出させる要素があるのかもしれない。逆に、僕の場合、野球はある程度瞬時に状況が把握でき、またこの先起こりうることが把握できているので、〈思わず〉声をあげるということが少ないのかもしれない。つまり、たいていの場合、冷静でいられるのだ。それでも時に興奮し、声が出て、目頭が熱くなるシーンもある。だからこそ、スポーツは見ていて楽しい。

 本を読んで声が出ることも、そう多くはない。というより、映像と比べると、ほとんどない。

 それでもやはり、声を出して笑うこともあれば、つい唸ってしまうこともある。

 『水木しげる漫画大全集』通巻005の「墓の町」は、読み終わったとき、誰に聞かせるでもなく、「名作だなあ」と一人呟いたし、深川岳志さんの『軽井沢日記』は、深夜に寝室で読んでいるにもかかわらず声を出して笑ってしまい、寝ている妻を起こしそうになってしまった。感動してやろう、笑ってやろうと本に向かうわけではないので、思わず声が漏れたとき、僕は自分でも驚いてしまうし、たまにそういう本に遭遇すると、より強く印象にも残る。