6月28日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.059「ツール開幕/不思議」

 ツール・ド・フランスが開幕した。去年は感染症の影響で8月末の開幕だったので、10ヶ月ぶりの「ツール」で、もう開幕なのかという気持ちがする。

 もちろん今年も感染症の影響は重くのしかかっているのだけれど、それでもワクチン接種が進んでいるというフランスでは屋外ではマスク着用の義務がなくなり、またイベント開催も6月末から収容人数の制限がなくなるということだ。去年は静まり返っていた沿道も、今年は去年の鬱憤や長いロックダウンのフラストレーションへの反動からか、ものすごい盛り上がりを見せている。大群衆がマスクもせずに大歓声を上げている映像が流れると、別の星の光景を見ているような気になるし、自転車文化の強さを見せつけられた気持ちにもなる。


 そんな例年とは違う熱気の中で起こったのが、初日の大落車だ。参加選手184人中、巻き添えを食わなかったのは20人程度という、超がつくほどの大規模な落車だった。その原因が、メッセージボードを持った沿道の観客がコース上に立ち入り、前方のカメラに映ろうと後方から来る選手たちに背を向けていたためで、コース上に飛び出たボードと180人ほどの集団の最前列の選手が衝突し、ドミノ倒しのように他の選手が巻き込まれた。日本語でいうところの「芋を洗う」ような状態で、あそこまでの混乱の様子は、見たことがない。

 観客のボードに書かれていたのが「がんばれ、おじいちゃん、おばあちゃん」という意味の言葉だったのは切ない。この時期であるから、なおのこといろいろな想像をしてしまう。けれども、悲劇の元凶になったことは、かえっておじいちゃんおばあちゃんを悲しませただろう。ツール・ド・フランスの主催者は、この観客に法的措置をとることを決めたらしい。主催者が観客を訴えるというのは、極めて異例のことだ。


 日本のお茶の間で自転車ロードレースのことが話題になることは、残念ながらほとんどない。しかしこの世紀の大落車はネットはもとより地上波のテレビでも話題になったようで、祖母から唐突にこの話題が出たので驚いた。

 僕としては、そんなことより、初日のアラフィリップと2日目のファンデルプールの圧倒的な勝ち方について誰かと盛り上がりたいのだけれど、残念ながら身近にサイクルロードレースのファンがいることを、寡聞にして僕は知らない。



 さて、6月も終わりということは、今年も半分が終わる。

 『水木しげる漫画大全集』は、3分の1ほど進んだところだ。

 どうもこのままでは、最初のんびり後半詰め込みという、『水曜どうでしょう』を思わせる行程になりそうだ。


 『水曜どうでしょう』は、今年の1月以来、順不同でいろいろな企画を見た後に、残った企画を時系列順で見ている。

 先日、最初の「ヨーロッパ」企画を見終えた(これもまた後半が過酷な日程の旅だった)。

この企画を放送した頃は僕はまだ小学生(!)だったが、それから二十数年の間に、僕自身が札幌に住んだり、企画のスタート地点である凱旋門をゴールとする自転車レースに夢中になっていたりすることを思うと、ふと、不思議な気分になることがある。


 不思議といえば、先日、『水曜どうでしょう』のDVDを見て、続いて星野源のニューシングル(それこそ「不思議」という曲名ですね)に付属のライブBlu-rayを見て、再生を終えると、切り替わった画面ではNHK『SONGS』で大泉洋と星野源が話していたからぶったまげてしまった。

 何かに呼ばれていたのだろうか、そんなことを想像してしまい、平日の夜に一人、驚きの声を上げた。


 さて、平日も週末も関係なく、向こう3週間、寝不足の日々が続く。驚きの声を上げることも多いだろう。スズメの涙ほどの体力しかない僕は、すでにDNF(Did Not Finish)寸前でもある。果たしてパリ・シャンゼリゼに、無事辿り着くことはできるだろうか。