8月16日|『水木しげる漫画大全集』を読む日々 vol.062「伝播と混交」

 先日、夕方に散歩のために家を出たら、近くの商業施設から音楽と太鼓の音が聞こえてきた。その音に誘われるように近づいてみると、櫓を組んで盆踊りをしていた。商業施設ができて一年が経っていないので、初めての夏、初めての盆踊りということになる。町内会の盆踊りは去年に引き続き中止になったが、おそらく日本中で多くの盆踊りが中止になる中で、盆踊りが「新設」されるというのは珍しいのではないかと思う。ささやかながら屋台も出ていた。

 商業施設の盆踊りなので、もちろん先祖の供養という意味合いはない。近隣住民の交遊の場でもなく、人寄せの催し物としての盆踊りだ。新しい商業施設が、それでも夏に行うイベントが盆踊りというのも、おもしろいし、僕はわりに好感を持った。石造りの現代建築の前で、音頭に合わせて人々が踊る様子というのは、シュールでもあるし、「ごった煮」感に、ぞくぞく来るものがある。


 文化の伝播と混交というものに、長く興味を持ってきた。文化は、土地から土地、また時代から時代へと伝わっていく過程で別の文化と混交し、結果として元のものからは変化して、その土地や時代に定着する。それが繰り返されてきたし、これからも繰り返されるだろう。ある文化のルーツを知ったり、想像したり、またある文化が伝播していく経緯や過程を知ることに、僕は無常の喜びを感じる。

 最新商業施設の現代建築の前でドラえもん音頭を踊る、というのは、文化の伝播と混交という話ではないのだけれど、こういう「入り乱れるさま」を眺めていると、このアンバランスな光景が、やがて定着し、奇妙な存在ではなくなるかもしれない、とも思った。そこまで大袈裟な話では、ないのかもしれないが。