11月14日|vol.071「松坂の引退」

 前回の続きで野球の話。

 前回はヤクルト・スワローズのファンの話だったけれど、かくいう僕は30年以上の西武ライオンズ・ファンだ。理由は祖父母の家から西武球場が近かったから。昔の西武は決してモラルある球団とはいえなかったけれども、まあ、それはそれとして。


 今年の西武は残念ながら42年ぶりの最下位という結果に終わってしまった。僕がファンになってから、というか僕が生まれてから初の最下位だから、記念といえば記念である。

 そんな、成績ではあまりパッとしないシーズンでもいくつか話題があって、松坂大輔引退というのはそのトップとなるべき話題だろう。


 松坂が高校3年生のとき、僕は小学6年生で、松坂は甲子園での活躍から西武での活躍までをリアルタイムで追った初めての選手だった。

 イチローが引退したときも「一時代が終わった」という大きな寂寥感があった。それは個人的な思い入れというよりも、最大限のリスペクトを込めた「野球ファンとして」という趣が強かったように思う(もちろん個人的な思い入れもたくさんある)。

 松坂の場合は、それよりももっと個人的な感覚だった。野球に夢中だった少年時代の原体験や、子供から思春期に移る時期の様々な記憶などが、ないまぜになって未分離の感慨として心にある。松坂の思い出をたどると、どうしてもそれに付随して「当時」の情景がよみがえってくる。

 本屋に行くと、松坂が表紙の『Number』や、『ベースボールマガジン』の「松坂大輔引退記念号」が並んでいた。引退試合から半月以上が経っていたけれど、ああ、松坂は引退したんだなと、あらためて感じた。

 たぶん引退してこんな気持ちになるのは、松坂以外にはいない。


 今年のパ・リーグはオリックス・バファローズが25年ぶりに優勝した。

 25年前、オリックス(ブルーウェーブ)を引っ張っていたのはイチローだった。

 今年、オリックスを率いていたのは、西武時代の松坂登板時のキャッチャーだった中島聡監督だ。



 さて、クライマックス・シリーズ(CS)は無事にオリックスとヤクルトが勝ち上がった。きちんとリーグ首位のチームが日本シリーズに進んで、まずはめでたい。

 とはいえ、僕はプロ野球がCS制度を導入して以降、日本シリーズにはほとんど興味を失ってしまったので、ペナントレースが終了した時点で、僕の中のプロ野球のシーズンは終了した。来年のシーズンインを待つのみだ。

 ここ2シーズン、球場での野球観戦ができなかった。来年こそ、気兼ねなく球場で野球を観られたらいいのだけれど、はたして。