最近話題の?

 少し前に近所に某巨大企業による巨大施設ができて、わが家のあたりはすっかり観光地になってしまった。ひと目でそこに行くとわかる人々が歩道を行き来し、駐車場は横浜やら湘南やら練馬やらの車がぎっしりと詰まっている(ちなみにその施設にはちゃんと名称があるのだけれど、近所の人は企業名で呼ぶことが多い)。

 そんなわけで、うちのあたりもずいぶんと変わったなあ、空き地だったところがどんどん分譲住宅になってすぐ埋まるし、家賃も少しずつ高くなっているし、道路に自転車レーンができたけど路肩に停車する車が多いからその都度車道にはみ出さなきゃいけなくて怖いし、みたいなことを考える機会が増えた。


 先日、三年ぶりぐらいに高校時代の友人と会って立ち話をした。高校一年のときに出会った友人ということはもう二十年来の仲ということで、その事実に気がついたときに大いなるショックを受けてしまったのだけれど、まあそれはそれとして、その巨大施設を指して、「ほら、最近話題のアレ、あれうちの近所だからさ、遊びに来てよ、案内するよ」みたいなことを(讃岐弁で)言ったら、「なんやそれ」と言われてしまって、またも大いなるショックを受けてしまった。

 「ほらアレだよ、あのでっかい会社が作ったあれでさ、テレビでもよくやってるじゃん」みたいなことを(もちろん讃岐弁で)言っても、「そんなん知らんわ。ウソつけ」みたいな反応しか返ってこない。なんだよテレビ見ねーのかよ、と自分もテレビを見ないのにそれは棚に上げて心の中で思った。

 しかしながら、よく考えてみると、僕が勝手に「最近話題」と思っているだけで、実際のところ世間的にはこの友人の認識程度が普通なのかもしれない。実は一般には全然話題なんかじゃなくて、新しもの好きの人々が大挙して押し寄せているだけなのかもしれないと、またも大いなるショックを受けるのだった。

 たしかに考えてみれば家の近所が出る番組は事前に情報をキャッチすれば時々見ているけれど、他の番組はほとんど見ないから、僕が見るテレビ番組の多くには近所の施設が出ていることになる。これはつまり、野党の支持者だけに次の首相は誰がいいかと聞いて、なるほど世間では次の首相にあの人が望まれているのだなと認識しているようなものだ。

 僕はすっかり反省してしまった。


 調べてみると、その施設はオープンから一年ほどで来場者が100万人を突破したらしい。

 誘導員の人がカウンターをカチカチしているのでそれを元にしているのではないかと推測するのだけれど、となると、僕のように単に散歩で通過することが多い人間もこの100万人には含まれていることになる。これを「来場」と呼んでいいのかはわからないが、仮に「通り抜け利用」が半分いたとしてそれを数から抜いたとしても、一日あたり1,400人ぐらいが来場している計算になる。抜かなければその倍だ。

 平日夜の閑散とした様子を思うと「ほんとうかな」という気がするし、休日昼の賑わいを見ると「そのくらいなのかな」という気もする。

 数だけ見るとやっぱり「話題」なのかという気もするけれど、最近の話題に疎い僕としては、あまり何もいうことはできない。