たまらないお菓子

 好きなお菓子を3種挙げろといわれたら、僕はグミとアイス、そしてポン菓子を挙げる。この3つに関しては僕は「無類の」といっていいほど好きだ。


 グミはパッケージが見えていると、居ても立ってもいられなくなり、食前だろうが食後だろうが本能のままに食べてしまう。僕の知り合いに、目の前に"もなか"があると人のだろうが誰のだろうが腹が満ちるまで食べてしまうという度を超えた「もなか食い」がいるのだけれど、その気持ちはわかる。

 もう10年以上前に、インフルエンザにかかって寝込んでいたとき、食欲がないのでグミばかり食べていた。トイレに行くたびにグミのようなものが現れて、人体の神秘を感じたものだけれど、どういう原理だったのかは知らない。まあ、体調が悪くても食べられるからグミはエラい、ということで。


 アイスは、僕は夏でも冬でも冷凍庫に常備して、シーズンともなると1日2個は当たり前、多い日は昼、夕、夜と3回だって食べてしまう。冷凍庫からアイスが切れると、そわそわしてくる。そして反動で冷凍庫に入らないほど大量のアイスをまとめ買いしてしまうことになる。

 ここ数年で一番おいしかったのはロッテ「爽」の「ジンジャエール味(辛口)」。当時3日ごとに5つ買っていたので、ひと夏で50個以上は食べた。そんな僕の熱烈なラブコールをよそに、残念ながらワンシーズンで姿を消してしまった。

 今年の「あたり」は丸永製菓の「白くまデザート メロンソーダ」。今年3月の発売で、すでに20個以上は食べたと思う。これから夏本番を迎えるので、「爽 ジンジャエール」の記録更新も狙える。願わくば、ワンシーズンで終売にならないことを。


 ポン菓子は子どもの頃から好きだった。祭りやイベントなんかで、あのグルグル回す圧力釜を見かけたり、どこからか「ボン」という破裂音が聞こえてきたりすると、たまらなく胸がときめいた。

 僕の小さい頃からの夢は、一斗缶にポン菓子を入れ、そこに顔を突っ込んで食べるというものだ。いまだ叶わずではあるが、いつか一斗缶と18リットル分のポン菓子を買って、実行したい(ポン菓子の内容量をリットル換算しないといけない)。

 先日、調布で「田伝むし」という会社のポン菓子を買ったら、これが幼き日のポン菓子初体験を思い起こさせるようなおいしさだった。味、歯ざわり、軽さ、どれもパーフェクトだ。あまりにおいしかったのでポン菓子を買うためにまた調布へ行ったのだけれど、期間限定販売だったのかもう店には置いていなかった。

 この会社はお菓子会社ではなく、ササニシキを栽培する宮城の農業生産法人だそうだ。ポン菓子にももちろんササニシキが使われている。

 ササニシキといえばかつてはコシヒカリと並び称されるほどのコメだったが、冷害や風に弱く、いまではほとんど聞くことがなくなった品種だ。ポン菓子と一緒に送られてきたパンフレットによると、2010年にはコメ全体の0.5%しか作られていないらしい。ただし味は折り紙つきで、知る人ぞ知る「名米」になりつつあるようだ。

 ササニシキの生産減に決定的な影響を及ぼしたのが93年の冷害による不作で、93年~94年にかけて日本は深刻な米不足に見舞われた。このときに初めて米が輸入されたりして、その騒ぎは幼いながらおぼろげに記憶がある。「タイ米」という言葉を聞かない日はなかった。94年は平成の大渇水があり、香川では地域によっては断水もしたので(この年は学校のプールがなかった)、いま思うと大変な時期だったのだと思う(さらに翌年初めには震災が起きる)。

 『こち亀』には丸々この「米不足」を扱った回があり、日本米が外国米と混ぜられて「ブレンド米」として売られたり、日本米と外国米の抱き合わせ商法があったりしたことを僕はそこで知った。


 抱き合わせ商法といえば、北海道のお土産に「じゃがポックル」というスティック状のじゃがいものスナック菓子があるけれど、あのお菓子は僕が札幌で大学生をしている頃に一時期大ブームを巻き起こし、極端な品薄になったことがあった。僕は土産物屋で整理券を買って購入したことがある。朝に整理券を手に入れて、取りに行ったのは夕方近くだった。

 当時、すすきのの街角などではじゃがポックルと他のお土産の抱き合わせ商法が行われていた。こういう「セコさ」はいまの転売問題と変わらない。

 希少価値の代名詞のようだったじゃがポックルも、やがて生産が追いつき、北海道では普通に買えるようになった。けれども、その後もしばらくは道外ではほとんど見かけることがなかった。そうやってブランドを守っているのだと僕は思っていたが、最近ではそのへんの北海道物産展でも見かけることが増えた。道外の駅の改札の外なんかで他の菓子類と同列に並べられているのを見ると、僕はそこに哀愁を感じられずにはいられない。


 話を米に戻すと、先日、タイ料理屋で食事をした。米はもちろん長粒種(たぶんタイ米)だった。かつての米不足の折には日本人が調理法を知らずまずいまずいといわれたけれど、ちゃんと調理をすればうまいのだ。

 ササニシキのポン菓子はというと、あきらめられずに「田伝むし」社のネットショップでまとめ買いした。父の日(今日ですね)だったので実家にも送ったら、「一袋があっという間になくなりそうだ」と連絡が来た。