ナイト読書のススメ

 僕が読書をするシチュエーションとして一番多いのは、「夜、寝る前の布団の中で横になって」です。

 その一番大きな理由は、姿勢に無理がないから。肩こり・首痛持ちとしては、座ってよりも、立ってよりも、横になってが最も楽に本を読むことができます。それだけ本を読むことに集中できるし、長い時間続けることもできます。

 寝る前という時間もいいです。一日の終わり、本を読むことで心を鎮める。明るい時間はいろいろなことがありますが、その日の最後ぐらいは一人で本の世界と向き合いたい。眠くなったら寝たっていいという、その安心感もあります(宅飲みと同じですね)。

 読書灯の小さな明かりで部屋の一隅が照らされて、暖かい布団に入ってページをめくる。紙を繰る音、隣の布団から聞こえてくる寝息、加湿器が湯を沸かす音。一人であり、一人でない時間。繰り返しになりますが、それが一日の終わりであるというのは、なお良い。


 夜、寝る前だからこそ不自由なこともあります。

 まず、調べたい事柄が出てきても、すぐに調べることができません。僕は辞書もパソコンもスマートフォンも寝室に持っていかないので、文中で何か調べたいことが出てきても調べられるのは後から、たいていは寝て起きてからのタイミングになります。

 あと、僕はだいたい深夜0時から1時の間に布団に入るのですが、ついつい読書に夢中になって、いつの間にか時間が過ぎていることもしばしばです。読んでいる最中は時計を見ず、眠たくなったりそろそろ寝ておいた方がいいなと感じたりしたら本を閉じるのですが、たまに新聞配達のバイクの音が聞こえてきて慌てることもあります。翌日も朝から仕事なのに。


 それでも、この時間があるから、その日一日を踏ん張ることができ、この時間のためなら、翌日を多少犠牲にしてもいいと思える。

 目覚まし時計の液晶をあっちに向けて、時間を気にせず、ネットも気にせず、疲労も気にせずに過ごす時間は、他では得難いものです。


 ところで先日、短冊を作って本に挟んでいることを書きましたが、短冊でも、付箋でも、ドッグイヤーでも、書き込みでも、何か印を残した本というのは、ひとには貸しにくいということに後から気がつきました。

 貸す側にしてもそのままだと本に私情が入りすぎてしまうし、かといって印を消したくもない。借りる側としても「ここが注目ですよ」と押し付けられるようで居心地がよくない。

 ブックマークというのは、物体としての一つの本を「個人的な存在」にする行為なのだと、自分で短冊を挟むようになって、はじめてわかりました。孤独な行為でもあり、自分の内により潜ることのできる心温まる行為でもあります。

 それもまた、「夜、寝る前」という時間に、よく似合っていると思いませんか?